弾丸
階段を上り、目の前にあったドアを蹴破った。
本棚が壁沿いに並んだ部屋の奥にただ一つ置いてあるデスクに男は座っていた。
「あんたが、ここの親玉ですか?」
「随分と礼儀がなっていないお嬢さんだな」
男は中折れ帽に黒の眼帯、そして葉巻をくわえた、
いかにも親玉という雰囲気を醸し出していた。
「あんたらみたいな奴隷商人に通す礼儀なんてないです」
「フン、随分な言われようだ」
男は葉巻を消し、立ち上がった。
「下での様子は見ていた。多少腕には覚えがあったつもりだが、敵う相手ではないな」
「なら、大人しく――」
「とはいえ、無抵抗で降伏という訳にはいかんな」
眼帯の男は懐から拳銃を取り出した。
「勝てないとわかっていて、抗う気ですか」
「こちらにも意地がある……それだけのことだっ!」
男は引き金を引いた。
『反射』を警戒してか、連射せずに、一発のみだ。
だが、その軌道は確実に私の眉間を捉えていた。
「無駄です」
私は、弾丸を片手で受け止めた。
「っ!化け物め!」
「お返しです」
受け止めた弾丸を指ではじき出す。
「くっ!」
男は倒れるように避け、弾丸は後方にあった窓を突き破った。
「そこっ」
「!?」
私は男の上方へと跳躍し、剣を振り下ろした。