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勇者の一撃
「接続――空間座標」
そして、勇者は剣を振り下ろした。
「その収束点を――破壊する!」
私は、それを床に落としたガラスのコップが割れる音だと思った。
こんな場所で、ガラスが割れるはずがないのに――
だけど、砕けたガラスが散らばるように、私達は空間から解放された。
「っ!」
咄嗟に身体をひねって膝を着くように着地した。
対するメメは眠るように泥の中に埋もれていた。
「ち、ちーちゃん!?」
「はぁ……はあ……」
「ちーちゃんが、助けてくれたんですか……!?」
「た、多分、ね」
「え?」
「自分でも……よくわからない」
「……」
その返答にあっけに取られたものの、逆にそうとしか考えられなくなった。
「じゃあ、きっと、そうですね。ありがとうございます」
「う、うん」
ちーちゃんにお礼を言ったあと、泥の中で倒れているメメの元へ歩いていった。
「……なんで、こんなことしたんですか?」
メメはゆっくりと目を開いた。
赤く染まったその瞳は虚空を見つめているようだった。




