彼女は何者か?
背後で扉が開く音がした。
「あちゃー、こんな穴開いてしまいましたか」
少女は、出来事の割に軽い口調だった。
「……」
「お怪我は……ないみたいですね。まぁ、これも料金設定内なので、勘弁して下さい」
「……あなたは何者ですか?」
私は振り返らずに、核心に迫る質問を投げかけた。
「え?」
「どうして、こんな村で暮らしてるんですか、たった一人で」
「どうしてって、生まれ育った村ですから」
「否定しませんでしたね、この村にあなたしかいないことに」
「……」
振り返り、女の子の顔を見ようとした。
しかし、逆光になって、彼女の顔を確認出来なかった。
「そう言えば、お名前、伺ってませんでしたね。何と言うんですか?」
「……?」
「答えられないんですか?自分の名前なのに」
「メメ、ですけど……」
「そうですか、嘘をついてごまかすつもりはないんですね」
「なんの話です?」
「この日記、失礼ですけど見させてもらいました」
私は表紙を見せて、そこに書いてある”メメ”の名前を見せた。
「私の日記……」
「この日記の日付……1000年前から始まってますね」
「……!」
「”試験管の中”の村。そこには、死霊ばかりの中で、
唯一、生きている者がいる……1000年以上も前から、ね」
「……」
「あなた、長い時間活動出来ないっておっしゃってましたけど、
それって日中動けないという意味ではないですか?」
「……どうしてそう思うんですか?」
「あなたが、日光に弱い不死者じゃないかと、疑ってるんです」




