memento mori
思考が加速していく。
そして、それに合わせて心臓の鼓動が早く、それでいて大きくなっていった。
「――」
”死を忘れるな”?
そうだ、どうして、私は当たり前のように思ったんだ?
-「タチサレ……タチサレ……」-
ただの宿屋で、死霊がいる……どうして人が死んでいる?
-「過疎地ってこういうところを言うのかな?」
「人っ子一人いませんね」
「暗くなったから、皆さんおうちに入ってしまったんでしょうか?」
「それでしたら、宿屋も閉めるかも知れませんね。早くチェックインしましょう」‐
-「どうしたんですか?」
「……いや、相変わらず、人っ子一人いないなぁ、と思って」
「この村の人には、まだ早い時間なのかも知れませんね。宿屋の女の子も受け付けで寝てましたし」
「いや、それは来た時もじゃない?」
「よく眠る村……ということなのかも、知れません」
「ま、そうかもね」‐
人を見ていない……あの少女を除いて……
-「あ、これ、村への案内板みたいですね」
「本当だ……『イン・ビトロ村』って書いてます」
「そんな名前だったんですね」-
メメント・モリは、異世界でラテン語とされる言葉、
イン・ビトロはラテン語での成句……
-「その通りですわ……イン、が中というくらいはわかりますが、ビトロ?
お魚の部位でしょうか?」
「えっと、確かガラスじゃなかったかな」-
そう、ガラスの中……ガラスとは”試験管”を意味する――
そして、あの女の子……
-「事情があるのですよ、こちらにも」-
-「余り長い時間、起きとれんのです」-
-「要は活動時間が限られとることどす」-
事情、起きていられない、活動時間が限られている……
そして、この日記の日付……
メメント・モリ……
全ての要素を一つに繋げた時、私はある一つの結論に至った。




