異なる部屋
下の部屋の鍵がない以上、空いてしまった穴から、ちーちゃんを助けるしかない。
私は、穴から下の部屋に降り立った。
「ちーちゃん、大丈夫ですか?」
「う、うーん……」
よく見ると、ちーちゃんは木のデスクに落下して、そのデスクを壊してしまったらしい。
とりあえず、ちーちゃんを担いで上の部屋に戻るか、
そう思った時、上の部屋から漏れる光で壁に何か書きなぐったあとがあったのが目についた。
「うん……?」
気になって、何を書いてあるのか読もうと思ったが、私には読めなかった。
しかし、よく周りを見てみると部屋の間取りは同じはずなのに、
本棚があったり、机の上に紙やペンがあったりと、明らかに他の部屋と違うのがわかった。
「ここ、もしかして、客室じゃない?」
「ううう……」
「あ、ちーちゃん」
「うん?なんだろ、これ……」
ちーちゃんは、お尻に下敷きになっていた開いたままの本を取り出した。
「……日記みたいですね」
人の日記なら、勝手に見る訳にはいかない。
だから、見るつもりはなかった。
開いてあるページを見るまでは……
「え、この日付って……」
思わず、日記を確認するように座り込む私と入れ替わるように、
ちーちゃんは壁に書きなぐっているものを見つけた。
「あれ…………memento mori?どっかで聞いたことあるような……」
瞬間、心臓が跳ねた。
…………死を忘れるな、だって?




