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逆戻り
「そうですか、となると……」
「雨が弱まったタイミングで、すぐに戻ったほうがいいと思いますわ。
今日はもう、やみそうにありませんから」
「そんなこと、わかるんですか?」
「ええ、これは”天気計”と言う道具です」
シンシアさんは、馬車の壁にかけてあった機器を指さした。
「このメーターが今の天気がいつまで続くかを表しています。
それによると、夜の11時までとなっています」
「なるほど……あ、じゃあ、もしかして、今日雨が降ることはわかってたんですか?」
「ええ。出発の段階で、ですが……とはいえ、どの程度の雨か。
ましてや、雷雨で、橋まで焼く雷を落とすなんて、わかりませんでしたが」
「そうですか。じゃあ、今日のところは、またあの村に戻るしかなさそうですね」
「ええ、今日という日が無駄になったのもそうですが、
またあの宿に泊まらざるを得ないのも、憂鬱ですわ……」
「まぁ、予定外のトラブルは旅には付き物ですから、仕方ないですよ」
そうは言いつつも、私自身も内心は憂鬱だった。
勿論、話を聞いていたセレナやちーちゃんもそういう表情に見て取れた。




