悪天候
出発して暫くすると、雨が降り出した。
「これは……強くなるかも知れませんね」
「馬達は大丈夫かしら?」
「あ、それなら……」
私は、手綱を引くセレナの後ろに立った。
「『エア・ドーム』」
魔法で空気の屋根を構築した。
「これで、直接濡れはしないので、体温低下などは大丈夫です」
「それはいいですね。でも、雨で地面がぬかるむのは避けられませんわ」
道は、多少平らになっているだけの土道、泥だらけになるのは免れない。
「まぁ、一分一秒でもという訳じゃないですし、安全な速度で進んで下さい。
空気の膜があると言っても、多少は視覚が悪くなりますし」
「わかりました」
……
その後も、どんどん雨が強くなっていき、雷も鳴り始めた。
「無理に進む必要はないですよ。ここら辺で休みましょう」
「いえ、それならせめて、この先にある橋を渡りましょう。
地図によるとその先に廃墟ですが、建物があります。
雷が鳴る中で、森の中にいるのは危険です」
それなら、そこまでは進もうと思い、馬を走らせた。
しかし――
「え、これは……」
「そんな……」
橋は崖と崖を繋ぐ、吊り橋だった。
しかし、その吊り橋は、雷に撃たれ固定する杭を残し、炎上していた――




