こりごり
その後も色々と大変な事があったが、とりあえずは一晩、無事(?)に過ごすことは出来た。
テントとは違う、ちゃんとした屋根のある場所で眠れるのは、
こんな宿だとしても思ったよりも安心感があった。
とは言え、余り長居したい場所でもない。
陽が昇ると、すぐに出発することにした。
……
「まぁ、泊まれるだけマシだった……そう思いませんか?」
「……そうですわね」
「……」
そんな中、ちーちゃんは一人離れて、辺りを見渡していた。
「どうしたんですか?」
「……いや、相変わらず、人っ子一人いないなぁ、と思って」
「この村の人には、まだ早い時間なのかも知れませんね。宿屋の女の子も受け付けで寝てましたし」
「いや、それは来た時もじゃない?」
「よく眠る村……ということなのかも、知れません」
「ま、そうかもね」
そんな話をしながら、馬車に乗り込んだところで、シンシアさんが、あ、と呟いた。
「結局、この村の名前、聞きそびれてしまいましたわ」
「そう言われると、気にはなりますが……
今後この村にまた用事があるとも思えませんし、もう、いいんじゃないですか?」
「う……まぁ、そうですわね。出来ることなら、寄りたくはないですわ」
「……」
皆が皆、宿で大変な目にあったことで、そんな気持ちになっていた。




