安くて、なにが悪い
「料金は前払い制となります。一人1000ウェンです」
「随分安いですね」
『リンドロンド』でとった宿の半額どころか、4分の1以下だ。
「それがうちの売りです……」
「ちなみに、お食事は出ますの?」
「簡易的なものですが、夕食だけ出します」
「……安すぎて、逆に怪しいですわ」
「……」
「でも、他に宿もなさそうですし……」
「そうですわね、わかりましたわ、4人なので、4000ウェンですわ」
「あ、4人なら、団体割引が適用できますので、3800ウェンになります」
!?
「そ、そうですか、ではこれで」
お金を受け取ると、女の子は四つの鍵を差し出した。
「2階に上がって、手前から、四つお取りしました。
鍵に番号が振ってあるので、部屋番号と照らし合わせて下さい」
「はい」
「…………あ」
「どうしたんですか?」
「一つ、大事なことを言い忘れました」
「えっ、なんですか?」
「ノークレーム、ノーリターンでお願いします」
「…………」
私達は互いの顔を見合わせた。
「あ、キャンセルしますか?説明不足だったので、今なら対応しますが……」
「……ちなみに、ですけど、この村に他の宿は?」
「ありませんね」
「…………」
再び、沈黙が流れた。
そんな中、セレナがぼそりと呟いた。
「……野宿よりはマシだと思いませんか?」
「……そう、だね」
私達は覚悟を決めることにした。




