剣士としての性
「でも、こんな重さなのに、ずっと腰に下げてるんですね」
「それは、だから、持ってないと不安なんだって」
改めてそう言われると、剣士としての本能のように聞こえる。
肉体としての本能はなくとも、精神としての本能は残っているのかも知れない。
「あれ、そう言えば、この剣……見せてもらいますよ?」
「あ、うん、どうぞ」
鞘を抜き、刀身を確認する。
思ったとおりだった。
「刃先が鈍くなってますね。手入れしてないのでは?」
なんでもそうだが、剣も使い続けることで消耗する。
故に手入れは大事なのだけど。
「え、そんなのわからないよ」
「まぁ……そうですよね」
記憶をなくしてからはそうだろうし、その前は催眠にかかり、戦い続けていた。
剣の手入れに回す暇はないと言っても、無理はない。
「じゃあ、丁度私も手入れをしようと思っていたので、一緒にやりましょう。やり方教えますよ」
「そ、そう?じゃあ、せっかくだし……」
結局、その日は剣の手入れをしたところで就寝した。
思った鍛錬は出来なかったけど、チヒロさんと打ち解けれたことは、悪くはなかった。
反面、チヒロさんの謎はより深くなった気がする。
…………これらの謎が解けるのは、まだ先の話だった。




