奴隷の話
後は隔離しながら、看病をして経過をみればいい。
街の外れ、森の入り口にテントを張ることにした。
テントを買ったことで、所持金はほぼなくなったが、宿を取る必要がなくなったので、
とりあえずはなんとかなる。
「あの……お名前はなんとおっしゃるのですか?」
「そう言えば、自己紹介もまだだったね。私はクリシュナ、クリスって呼んで。貴女は?」
「セレーナと申します。では、こちらもセレナとお呼び下さい」
「よろしくね、セレナ」
私は水の魔法と火の魔法をかけ合わせ、テント内に水蒸気を発生させた。
病状をよくするには加湿と換気にも気をつけないといけない。
「一週間くらいすれば、よくなると思うから」
「ありがとうございます。でも、どうして見ず知らずのわたしにここまでしてくれるのですか?」
「えー?そんなの……目の前に死にそうな人がいて、自分なら助けられるんだったら、誰だって助けようとするよ」
「……そう、なんでしょうか?」
「そうだよ」
セレナは首をかしげていた。
「ところで、セレナはどうして、あんな場所にいたの?」
「…………捨てられたんです」
「捨てられた?」
「わたしは……お金持ちの家で飼われていた奴隷なんです」
「奴隷……そういえば、そんなこと言ってたね」
「でも、元の主人が亡くなり、奴隷商人に引き取られたんですけど……病気で売り物にならないから、と」
「それで……あの山の中に?」
セレナは頷いた。
自分の中に言いようのない感情が駆け巡った。
つまりは、奴隷商人は自分の手を汚さず、使い道のなくなったセレナを殺そうとしたのだ。
そんなことはまともな人間のやることじゃない。
「……セレナ、知ってる?奴隷って今では違法なんだよ」
「そう……なんですか?」
「病気が治ったら……教えてくれる?その奴隷商人のこと」
「ど、どうするおつもりですか?」
「……ちょっと、お話をしにいこうと思うんだ」