薬
受け皿として瓶を置き、取ってきた薬草と買ったばかりの果物をそれぞれ掴んだ。
必要な成分は判っている。
なら、あとは加工方法を考えればいい。
両手に魔力を込め、材料を一つ一つ、圧縮・分解し、ボール大の魔力と成分の渦へと変換していく。
「分解完了――次は――」
必要な加工を魔力のボールの中で施していく。
それぞれの栄養素を最大限活かせるように魔力の仕切りを作り、加熱、凍結、乾燥、灰汁抜きまで――
そして、今度は仕切りを外し、成分を合成――合成したものに再度必要な加工を施し、別の成分を合成。
「――出来た」
だけど、これで気を抜いてはいけない。
複雑に絡んだ魔力を引き抜き、本来ある形へと戻していく――下手にこのまま渦を外してしまうと暴発する恐れがある。
慎重に慎重に――私の額には汗が浮かんでいた。
余分な魔力を削いだところで、薬を瓶に移す。
その際には時間がかかっても魔力のフィルターを作ることで、余分なカスを排除し、純度の高い薬を作ることを忘れてはいけない。
「これで、よし!」
薬が出来たところで、背負っていた少女を抱きかかえコップに移して渡した。
「自分で飲める?」
「は、はい……」
そう言う少女だったがコップを持つのもやっとのようだった。
「……わかった。貸して」
「?」
私は少女からコップを受け取ると薬を口に含み、そのまま少女に口移しした。
「!?」
「ふぉっ!?」
思った通り、飲み込む力も足りていない。
私は微量の電気を魔法で送ることで少女に薬を全て飲み干させた。
唇を離して少女の顔を見る。
少し顔が赤いのは血色がよくなった証だろう。
徐々にだが、薬が病原を排除しようとしているのがわかった。
「うん……あ、イワノフさん!」
「えっ!?な、なんだい!?」
「コップありますか?」
「あ、あるけど……」
「じゃあ、この薬を移すのでイワノフさんも念のため飲んでいて下さい。予防にも効くので」
「あ、ああ、色々とありがとう」
「?別にイワノフさんには大したことしてませんよ?」
「いや、色々ね。色々」
「……?」




