シンシアの本領 前編
エル兄さんは話を交わしたあと、一足先に出ていった。
私はエル兄さんに話したことを元に、他の仲間に今後のことを相談することにした。
「……と、言う訳なんですが、どうです?」
「わたしはクリスさんについていくだけですから」
セレナは真っ先に同意した。
「……右も左もわからないんです。あなたに従います」
若干、後ろ向きな言い方だが、チヒロさんもそれにならった。
「行き先に関しては、クリシュナさんが決めていただければいいかと」
シンシアさんも同意した……ようには思えた。
「他に何かあるんですか?」
「他国に行くとなると、幾つかクリアしないといけない問題がありますわ」
「どんなことがあります?」
「まず第一に貨幣の問題ですね。他国ではウェンは使えません。
次に移動の問題、海路を使う事に異論はありませんが、その場合、馬車をどうするか。
処分しても構いませんが、その場合、大荷物を自分達で運ばないといけませんわ。
そして、それに伴い、移動に使う船をどうするか、という問題も発生します」
「なるほど、確かに色々と問題がありますね……」
私が頭を抱えると、シンシアさんは笑いながら手を振った。
「いえ、これでクリシュナさんの行き先が制限されるなら、本末転倒ですわ。
どうすべきかの考えはあるので、聞いていただけますか?」




