行き先は
「オレは依頼があったから、陸路で南の国に行くつもりだ」
「そうなんですか?」
「ああ、だから、お前は別の方角へ行くといい、分かるだろ?」
「でしたら……港から海路を使い、西に向かおうと思います」
「西の国……『パラガム』辺りか?」
「そのつもりです」
「あそこには、ミカがいたはずだ」
「え?」
ミカナリア姉さん、エル兄さんの双子の姉で武術で名を馳せた『拳聖』として知られている。
「そう、ですか……でしたら」
「いや、それなら、それで悪くないかも知れん」
「どうしてですか?」
「ミカも『パラガム』でアルの兄貴のことを探している。
この国にない新しい情報を掴んでいるかも知れない」
「それなら、手紙とかで知らせが来るのでは?」
「確実な情報ならな。だが、噂レベルの不確かなものなら、それぞれ役割を持つ身、混乱を避けるために控えるだろう。そこで腰の軽いお前の出番という訳だ」
「確かに、今は単なる噂でも情報は欲しいですね……」
「だろう?それに『パラガム』はさらに西や北の国に向かうための通り道でもある」
「完全な無駄足ということでもない、ということですか」
「そうだな、ついでにミカに稽古をつけてもらえ、
アイツは徒手空拳に特化してる分、専門的な指導を受けられるだろう」
私の武者修行にも丁度いい、ということでもある。
「わかりました、そうします!」




