和解の杯
エル兄さんは私達の同じ宿をとった。
その日の晩は下の酒場で久しぶりにエル兄さんとの食事になった。
「おお、確かにこの麦酒ってイケるな」
「でしょでしょ?」
「のどごしと言うのか?喉が渇いてる時に丁度いいな」
「うんうん。でも、お酒だから、結果的には後からもっと喉乾くんだけどね」
そして、何故かシアさんと意気投合していた。
「あの……怪我してるのに、そんなに飲んで大丈夫ですか?」
「うん?この程度なんてことはない!」
「そーそー、アルコール消毒って言うしねー!」
「はぁ……」
「ところで、クリスは飲まないのか?飲める歳になっただろ?」
「あ、はい。まだ、修行中の身ですし」
「おいおい、それはオレだってそうだぞ」
「え、でも、エル兄さんは『戦闘の達人』と……」
「そんなの関係ねぇよ。修行に終わりなんてねぇんだよ」
「ま、まぁ、そうかも知れませんが」
「別に嫌いって訳じゃねぇんだろ?久々に会ったんだ、付き合えよ」
「そうですね……うーん」
「なんだよ、別に修行ったって、僧侶じゃねぇんだから、いいじゃねぇか」
「……わかりました!すみません、私にもその麦酒を」
「かしこまりました」
二人が頻繁に頼むからだろう、麦酒は素早く出てきた。
「よっし、じゃあ、乾杯だ」
「は、はい……」
「かんぱーい!イェイイェイ!」
「……大丈夫ですかね?」
そう呟いたセレナの心配は、現実のものとなった……




