一閃
私ではエル兄さんに敵わない。
そんなことは何度も……幾度となく言ってきた結論だ。
限界に近づいていることで、脳内は逆にクリアになっている。
今の私に出来る方法……唯一の勝筋を私は見据えていた。
私では勝てないのなら――
勝てる相手を用意すればいいんだ。
「――」
イメージする。
エル兄さんに勝てる相手を。
そう、私は――
「……来い!」
私は地を蹴る。
そして、最速の一閃を叩き込む。
「――」
「馬鹿正直に!」
そして、その一撃はいともたやすく受け止められる。
「――」
そこが、”起点”だ。
模倣しろ。
「!?」
私は、、、、、、
今の私は――――
「『無形の型』」
――――『剣聖』だ。
「!?」
剣が蛇のように蠢く。
そして、刀身はエルグラドの胴を捉えていた。
――――
私の前でエル兄さんは座り込んでいた。
横腹を押さえ、指の隙間から血が流れていたのは、私の剣が届いた証だった。
「……」
「なんだ、今のは?鎧がなければ、胴を薙ぎ払われてもおかしくなかった……!」
「……今のは借り物の技です」
「借り物だと……?」
「『剣聖』……ランパード兄さんの模倣です」
「!!……ふ、ふふ、そうか。確かに『剣聖』の剣ならオレに届くだろう」
「……」
「いいだろう。お前の勝ちだ」
「私の……勝ちでいいんですか?」
自分が言うのもおかしかったけど、勝負がほぼついていたにも関わらず、
悪あがきをして、決め手は人の技。
「ふん。誰かの技だっていうなら、殆どの技はそうじゃないか」
「……私は最後制御が効きませんでした。」
エル兄さんは殺さないようには手心を加えていたけど、
私の最後の一撃は、エル兄さんを殺してしまってもおかしくなかった。
「だから、なんだって言うんだ。オレはこうして生きてる。それでいいじゃないか」
「……エル兄さん」
「なんだ?」
「お手合わせ、ありがとうございました」
「……ああ」




