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悪意
私がエル兄さんより、弱いなんてことはわかりきっていたことだ。
そして、世間知らずな分、からめ手や悪意に弱いことも知った。
それでも、私は諦めたくなかった。
身体の痛みはいつか癒える。
だから、今感じている痛みは一時的なものだ。
だけど、心の痛みはそうはいかない。
アル兄さんを諦めるということは、その痛みに付き合っていくということだ。
私は弱い。
だから、そんな痛み、耐えられない――
「わかり、ました……エル、兄さ、ん」
「わかってくれたか!」
エル兄さんが足をどけた。
それと同時に左足にありったけの気功を込めて、逆立ちをするようにエル兄さんを蹴り飛ばした。
「ぐっ……お前!」
私は勢いを利用して、立ち上がった。
「これが……不意を突く、悪意ですね」
エル兄さんは驚いたように、目を丸くした。
初めてまともに、エル兄さんに一撃を喰らわせた。
とは言え、肉体は限界が近い。
ゆったりと、剣を構え直す。
「……そうかい、まだやるんだな」
エル兄さんも構え直した。
目の色が変わった。恐らく、これで決める気なのだろう。




