付け焼き刃の奇策
「……フン」
エル兄さんは、見透かしたように笑った。
私は、地を蹴った。
「『ファイア』!」
火球が真直線にエル兄さんに襲いかかる。
そして、その後を追うように私も――
「『隼剣』――」
手甲でエル兄さんは火球を受け止めた。
その一瞬の隙を突くように――
「『彗星連撃』!」
左の剣、右の拳で連続攻撃を叩き込んだ。
「『疾風拳・瞬撃連打』!」
1テンポ遅れて、エル兄さんは同じ連撃で返す。
気功を纏った素手と手甲の差はあったが、発動が早い分、私の方が有利だ。
――と、思っていた。
「たぁぁぁああああっ!」
「はぁああああああっ!」
互いの攻撃がぶつかり合うが、エル兄さんの拳に押し返され気味だった。
単純な技量――だけではなかった。
「くっ……!」
思わず、剣が大振りになった。
「遅い!」
その隙を突かれ、蹴りを腹部に喰らった。
「ぐ……!」
「『気功波』!」
吹っ飛んだ私に追撃の気功を叩き込まれた。
衝撃に揺らされながら、距離を取った。
「かふっ……!」
口の中に血反吐が溢れ、口の端から零れ落ちた。
「アイデアは悪くなかった。だが、付け焼き刃ではな」
「う……」
「剣が拳と重なるのを恐れて、太刀筋が制限されていた。
それに単純なスピードでは拳だけのほうが速いんだ。押し返されるのは自明の理だ」




