口撃
「はぁ……はぁ……くっ!」
なんとか息を整え、剣を構えなおした。
冷静にならないといけない。
元から真正面からやって、勝てる相手じゃないんだ。
その上、からめ手を使ってくるなら、こちらはそれ以上に頭を使う必要がある。
「……布で戦うなんて、出来るんですね」
私は探るように言葉を投げかける。
現状、最重要視するのは、エル兄さんとの間合いだ。
その間合いを見極め、仕掛けなければならない。
「お前が知らないだけだ。布を使った武術は、いくつか流派がある」
エル兄さんが間合いを詰める。
「そうですか、そんな武術にも精通しているんですね」
詰められた、間合いを離すように後退する。
「『泥棒猫』の特性を活かすためだ」
エル兄さんは、間合いを詰めず、”待ち”に入った。
「なるほど、変幻自在の武器に対応した、変幻自在の武術といったところですか」
今度はあえて、間合いを詰める。
仕掛けてくるなら、同時に突っ込むつもりだったが、エル兄さんは動かなかった。
「……」
「流石は『戦闘の達人』ですね……他にも特殊な武器を扱えるんですか?」
「それで舌先三寸で、動揺を誘ってるつもりか?」
「っ……!」
「お人よしのお前には無理だよ、そんなことは」




