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制約
「それは……ないとは言い切れんが」
「仮にエル兄さんの言うように、
誰にも見つからずに街に身を隠していた……それはそれで違和感がありませんか?」
「……催眠がかかった状態で街の住人を見れば、襲いかかっていただろう」
「はい、だから、日中は街の外にいたんじゃないかと思います」
「なんの為に?」
「それは……わかりませんが」
「目的がこの勇者さんだと、バレないためじゃないですか?」
そう言ったのは、セレナだった。
セレナは立ち上がり、少女の額に手を添えた。
「誘導されていたんじゃないですか?夜の間は街に昼の間は外に……そう考えれば辻褄はあうと思います」
「確かに、最初に会った時、野盗らしき人達に取り囲まれていた……」
「協力者……いや、組織立って、この子を襲っていたということか。
それなら、それで、どうしてわざわざ街の方に誘導するんだって疑問は残るが」
「わかりません。わかりませんが……きっと、そういう制約があったんじゃないですか?」
「制約、だって?」
「ええ、そうしなければ、いけない事情があった。
そういうルールだった。
そういう、事象だった……とか」




