暗躍していたモノ 後編
「ただの傭兵が儂を捕まえれるはずが、なかろう。何者だ、あの戦士は」
「ああ……アンタの因縁の相手、その血族だよ」
「!!……そうか、あやつの血族か。もしや、あの娘も?」
「……娘?」
「うむ。急なイレギュラーじゃったが、誘導し、計画に組み込んだ。
あの、勇者の足止めに使わせてもうた」
「ああ、あの娘か……そうだな、アルベルトの件もあいつによるものだ」
「アルベルトじゃと……?」
「全く、奴のせいでシナリオの修正に手間取った」
「今回の件、もしや、あのアルベルトのしわ寄せか?」
「ああ、だがお蔭で、シナリオの修正は出来た。
この街に誘導したことで勇者の力は封印される事象を起せた。
勇者はこれで現れない……奇跡でも起きない限り」
「それはよかったが、しわ寄せだと考えると気分はよくないの」
「そうは言うな。アンタもシナリオの重要性は知ってるだろう?」
「……老いぼれ、落ちぶれた身じゃ。権力にはもはや興味はない。
しかし、世界の真理は解明させてもらう」
「その為に、シナリオは必要だろ?……稀代の大魔術師殿」
「うむ、儂はあのエレンフォレストを越える魔術師であると証明するためには……!」
「だったら、後は他のメンバーに任せな。
アンタは充分仕事をしてくれた。時期が来れば解放されるだろう」
「……頼んだぞ」
「ああ、せいぜい長生きしてくれよ」
「それこそ余計なお世話じゃ」
「そうか」
そう言うと、カルマと呼ばれた人物は去った。
老婆は彼との会話は壁越しだったため、彼の表情を見れていない。
だから、彼の口許が吊り上がったことを、老婆は知らない。




