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狂信者
「それが神の御心、お導きですから」
さも、当然かのようにマリィさんは言ってのけた。
「っ……神さまが、そう仰っている、と?」
努めて、変な刺激を与えないように丁寧な言い回しを心掛けた。
聖教会は聖魔力という存在もあって、ほぼ全ての国において影響力を持つ。
しかし、その本質は宗教だ。
故に宗教狂い特有の常軌を逸した存在も生まれえる。
私はマリィさんにその臭いを感じた。
「そうです。
神様は私の心に語りかけてくれました。
お姉様を元の道に戻すように、と」
「……」
マリィさんは心の底から信じているようだった。
……自身の願望を肯定するために。
神の心なんてあるとしても、私ははかることは出来ない。
しかし、それでも『聖なる盾』として芽吹いた才能を、その道を諦めさせてまで、
『聖女』の資格を失った元の道に戻そうとするのが、
神の意志だとは思えない。
「なので、再度お願いしますわ。
ご協力頂けませんか?」
「っ……」
マリィさんは曇りのない目で私を見ていた。




