門番の悲哀
「貴女は……?」
「はじめまして、聖教会のマリィ=ベルです。
お気軽にマリィと呼んで下さいませ、学長の妹様」
「あ、はじめまして……学長?姉は理事では?」
「ああ……いえ、学長も兼務されてますのと、
そちらの立場で接することが多いのでそう呼びましたが、
確かに理事と呼ぶべきでしたね」
「あ、いえ……」
引っかかっただけで、正直私としてはどちらでもいいと言うのが本音ではある。
「それより、門番さん?
この方達の身元はマリィ=ベルの名において保証いたしますので、通していただけますか?」
「……それは、まぁ、構いませんがね」
と、門番はバツが悪そうに目を逸らした。
「何か?私の保証では不足ですか?」
「いえ、そういう訳ではありませんが、
あまり、そう……なんというか、ご自由にされると我々の立つ瀬が……その、ねぇ?」
「なんですか?歯切れが悪いですね」
なんとなくだが、察した。
『フォーグログ』において、聖教会の立場が強いのはやり取りを見ていると、外部の人間である私にも察せる。
だが、門番は憲兵であり、聖教会とは別組織にある。
だから、こうして正規の手順を踏まずに特例を認めるのは、聖教会が強い立場を持っているとはいえ、よろしくはないのだろう。




