叱咤
宿につくと、事情を話し、少女を私のベットで寝かせた。
「外傷もそうだが、疲労の度合いが酷いな……」
そう言って、エル兄さんは少女に気功を送りこんだ。
「セレナ、私はいいから、先にあの子を回復させて」
「それは構いませんが……いいんですか?この人は話しかけたら、襲ってきた人なんですよね?」
「それは……」
「正しく対処出来ていれば、そんなことはなかった。
それでなくとも下手なちょっかいをかけなければ、戦う必要はなかった。
ハッキリいうと、お前の判断ミスだ、クリス」
「……はい」
「ちょ、ちょっと、貴方。
クリシュナさんのお兄さんか知りませんけど、乱暴な言い分じゃありませんの!?」
「行動には責任がつきまとう。力あるものなら尚更な。
クリスもなまじ人より力を持っている分、使いかたを考えなければならない。
それに、間違えた時に叱るのは兄として、当然の役割だ」
「……っ!」
「エル兄さんの言う通りです。だから、セレナ、お願い」
「わ、わかりました……」
セレナが少女に『神仙術』をかける。
少女の顔色が少しよくなったように見える。
「クリス、こっちに来い」
「は、はい……」
「オレの腰のホルダーに、常備してある栄養薬がある。手が離せないから自分で取って、飲め」
「あ、ありがとうございます」
言われた通り、薬を飲んだ。
エル兄さんは口調は厳しいが、気遣いを怠らない人だった。




