考えたくないこと
「……」
しばし、沈黙が流れた。
問いかけた訳ではないけど、シンシアさんには答えづらいことを言ってしまった。
私は続く言葉を探して、口にした。
「それで……ええと、ちーちゃんを封印したって、そう言ったんですよね、その人?」
「はい、そうですわ」
「勇者の封印……それだけで只者じゃない、けど……
認識阻害に加えて、規格外というか、そんな相手ーー」
その時、私はある可能性に思い至った。
だけど、その考えを否定したくて、考えないようにした。
でも、ミカ姉さんに言われたことを思い出した。
そうだ。
その可能性は……
「私の……"きょうだいの誰か"なら、あるいは可能かも知れません」
「え?」
「それだけの能力、きょうだいの誰かなら……出来るかも知れません」
考えたくはない。
でも、それならちーちゃんが敗れたことに納得出来る。
「その……人は、野盗に見せかけるために私も殺す方法もあるって言ってました」
「っ!」
「でも……それは出来ないって言って去っていったんです」
「…………狙いがちーちゃんだってことが、簡単にわかってしまう。
それなのに、シンシアさんには手を出さなかった。
その人が私のきょうだいなら……ちーちゃんは目的だから、封印せざるを得なかったけど、シンシアさんは目的じゃないし、私の仲間だから……手を出さなかった……そう考えることも……出来ますね……」




