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彼女のいない馬車 27
「…………」
「言葉の意味がわからないとは思わないが……
選ばせてやるから、選べってことだよ、どちらかを」
男は緑の銃身と通常の銃身、その両方のガンカトラスをつきつけた。
「っ……」
チヒロは苦虫を噛み潰したような顔で男を見上げた。
既に満身創痍。
回復は追いつかないし、逆転の手が思いつくはずもない。
「チヒロさんっ!!」
シンシアの声が響いた。
この騒ぎだ、馬車にいたシンシアは気付き、
起きて様子を見守っていた。
そして、チヒロの窮地を見た。
彼女に何が出来るはずもない。
それでも、声を出さずにはいられなかった。
その瞬間、男は声に気を取られた……ように感じた。
僅か一拍の隙……だが、その一瞬が勝敗を分けることもある。
「……『限界を超えていけ(サーキット・オーバーロード)』
「!」
全てのエネルギーをこの一瞬に賭け、チヒロは男に切り掛かった。
しかし、それでも男には届かない。
剣は虚空を切り、両手のガンカトラスからの反撃を受けた。
だが、チヒロはそれさえも覚悟の上だった。
「ーー『閃沙・獄路』っ!」
今のチヒロにとって、必殺のカウンター技を放つためにはーー




