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彼女がいない馬車 20
「……チィ!」
迫り来る大剣を見て、男は苦々しく舌を鳴らした。
男は二丁のガンカトラスで、正面から大剣を受け止めた。
この一撃に関してはチヒロは完璧に放っていた。
完全回避は間に合わない攻撃……生半可な回避ではただでは済まない、どこかしらを持っていかれる。
故の真正面からの受けなのだがーー
「ぐっ……くっ……!」
金属が激しく擦れる。
耳障りにギリギリギリギリと音がなる。
「つっ……あぁっ!」
男が力の限り押し返した瞬間、ベキン、とひしゃげる音がした。
押し返した事で出来た回避のタイミングを利用して、男は受け流す形で、大剣を逸らした。
しかし、その結果、ガンカトラスはその銃身だけでなく、土台となるグリップまでひしゃげて使い物にならなくなった。
そして、逸らす中で崩れた体勢になったところをチヒロは狙って、左の拳を振り下ろすように殴りかかった。
「はぁっ!」
「っと……!」
左腕にガンカトラスを受けたせいで関節を曲げられず、まるでハンマーを振りかぶったような大振りなパンチだったせいで寸前のところで回避され、パンチは空を切った。




