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彼女がいない馬車 19
チヒロの進路を塞ぐように投擲された刀身。
加えて、男は次の銃身をグリップにセットして銃でチヒロを狙える位置に跳躍していた。
一瞬の躊躇が悪手となる、そう感じたチヒロはそのまま、剣の元へ向かった。
「くっ!」
左手で投擲されたガンカトラスの刀身を受け止めた。
生半可に受け止めれば回転する刃によって左手以外も傷つくと考えたチヒロは上から下までを左腕で押さえ込むために全面を受けた。
刃が左腕に食い込むが、これで進路は確保出来た。
足元を狙う、もう一刀の刀身を跳躍して回避し、右手は剣を掴んでいた。
男は剣を掴んだチヒロに向けて引き金を引くが、寸前のところでチヒロの姿は消えた。
「"跳ばれた"!?」
男は背後を警戒したが、同じ手は通用しないことをチヒロは感じとっていた。
チヒロは男の斜め上……月を背にした位置にワープしていた。
「『閃沙・突"剣"』!」
チヒロは振りかぶった剣を槍投げのように投げた。
そう、せっかく回収した剣をあろうことか手放したのだ。




