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彼女がいない馬車 15
「……」
そんな、チヒロの額に男は残った右手の銃口を突きつけた。
「なんて、ブザマだ……!」
チヒロが自身をそう罵ると同時に男は引き金を引くーー
ーー瞬間、チヒロは次元と次元を繋ぎ、男の背後に跳んだ。
「っ!」
男は引き金を引かず、右手を振って反時計回り回転する。
素早い反応だが、チヒロの剣の方が速い。
せめて、左手に武器があれば、最短距離で受け止めることがーー
男の左のふくらはぎの辺りから、ガンカトラスの銃身が飛び出し、銃身を失なっていた左手のグリップにはまった。
ガキィィンッと、金属が擦れ合う音が響く。
チヒロの剣と男のガンカトラスが鍔迫り合い、火花を散らした。
「ちっ!」
チヒロは反動を利用し、器用に右足だけで着地した。
だが、チヒロが休む暇など与えられない。
男はガンカトラスの引き金を引いた。
「『廻れ』」
チヒロはそれを防ぐために剣を空中に"設置"すると剣はチヒロの呼び掛けに応じて、高速に円を描き、盾となり銃弾を防いだ。




