彼女がいない馬車 14
「……なんのためにそんな武器を」
銃というのは精密機器だ。
それで殴打したりするのは、非常時や最後の手段であって、
ガンカトラスのような事をすれば、切りつける事で銃が歪んでしまえば銃としての機能はなさなくなる。
場合によっては異常に気づかず暴発の危険もある。
「何故って?」
男は、銃口を向けた。
チヒロは咄嗟に修復途中の左手ではなく、剣でガードする。
「これが、貴方相手に適した武装ですから」
「……!?」
チヒロはその言葉に僅かながら戸惑った。
その隙をついて、男は引き金を引く。
ガードしていたチヒロは、弾丸を剣で弾いていた。
しかし、次の瞬間、チヒロは足を取られ、前向きに倒れた。
「うっ……!?」
チヒロはすぐに立ちあがろうとして、バランスを崩す。
上半身だけ起こして、激痛がする左足を見た。
左足にはガンカトラスの銃身……刀身が刺さっていた。
「これは……」
投擲したのだ。
銃という飛び道具があるにも関わらず、剣を投げたのだ。
一見不合理に見える行動だったが、飛び道具として、銃の機能だけを警戒していたチヒロの意識の外にあった行動だ。
不意を突くことで、チヒロの足を封じることに成功していた。




