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彼女がいない馬車 13
「……浅い、か」
男の一閃は、確実に左手の結合部を捉えていたが、両断には至っていない。
チヒロは体勢を立て直すためにそのまま距離を取る。
「自動修復……厄介ですね」
「……」
チヒロの肩からは血が噴き出していたが、徐々に勢いがおさまっていく。
それは急速に傷口が塞がる、チヒロの"機能"だった。
一方でチヒロは男の銃を見る。
銃身が変わった形状だとは思っていた。
まるで、そこだけ剣を埋め込んだように、銀色の中身部分だけ膨らんだ薄い板のような形状。
ただ、それが銃であることは確かで、その先にある銃口から弾丸が射出されたのは確かだ。
「銃剣って、そういう武器じゃなかったと思うけど……
随分と変わった武器を使ってるんだね」
「傷口が塞がるまでの時間稼ぎですか?」
「……ただの興味」
「ふ」
見え透いた嘘に、男からは嘲笑がこぼれた。
しかし、男は仕掛けてはこない。
そして、答えるように銃を下に下げながら見せた。
「ガン・カトラス、銃と刃物を同時に使えるようにした特注品です」




