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彼女がいない馬車 12
「……あからさまなカウンター狙い、ですね」
「……」
間違いではない。
チヒロは撃ってくれば、左手でガードしつつ右手を振り抜いて、射撃後の隙を突こうとしていた。
ただ、どちらかと言えば相手の出方を見たかったのが大きい。
「まるで、こっちのことを知ってるみたい。
アンタ、何者なの?」
「……さぁ?」
認識が出来ない中で、男の口元が緩んだ気がした。
そして、こう続けた。
「認識出来ないのなら、他人ではないですか?」
「っ!」
男はカウンター狙いをわかっていながら、引き金を引いた。
一瞬の動揺、しかし、やる事は決まっている。
左手で防ぎながら、右手を振り抜く。
だが、動揺の分1テンポ遅れた。
男は低い姿勢で、カウンターの一撃を躱わすと、チヒロの懐に潜り込んでいた。
「しまっ……!」
左手を盾に後方に飛ぶチヒロ。
「遅い!」
しかし、その左手との結合部……つまり肩を銃身で叩かれた。
「うぐっ……!」
肩から血が出る。
その傷口は明らかに、切り口。
そう、厳密には叩かれたのではなく、斬られていた。




