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彼女がいない馬車 11
爆煙が上がる。
チヒロはゆっくりと地面に着地すると、警戒を緩めず煙が開けるのを待っていた。
その最中、チュインという音が響いた。
「!」
咄嗟に左手を盾にする。
チヒロの左手は形こそ生身のようだが、剣と融合したことで、かなり頑丈だ。
故に咄嗟の盾になりうる。
逆に言えば、そんな左手でなければ貫通していた。
その"弾丸"は。
「……」
「……」
お互い煙が切れるのを待っていた。
共に仕留められた確信はなく、それでも次の仕掛けに移らなかったのは互いの姿を再度目視したかったからだ。
そして、再び対峙する。
チヒロは左手を前に出したまま、男はチヒロに銃を向けた姿勢のままだった。
互いの姿を確認し、二人は一瞬口元が緩んだ。
"そうか、動かないか"その思考が二人が考えたことであり、
同時に同じ考えを抱いたことが理解できてしまったからだ。
チヒロは同じ体勢のまま、剣を右手で逆手に持ち替え、左手で挑発するように手招きをした。
「銃を武器にしてるのに、撃ってこないの?
距離はそちらのアドバンテージでしょ?」




