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彼女がいない馬車 10
「認識を……阻害されている?ワタシが……」
「失礼。実はシャイでして」
チヒロは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「ま、冗談はここまでにしておきましょう」
そう言うと、男は2丁目の拳銃を抜いた。
「万全の状態で挑まず、事をしくじれば後悔しかないですし」
チヒロはそれを見て、小さくため息を吐いた。
「……よくわからない。
こんなのはいつぶりかな……まぁ、でもーー」
チヒロは剣を強く握った。
「アンタが、害意を持った敵であることは確かか!」
そして、男に向けて突っ込む。
「『閃沙ーー』」
チヒロはそのまま斬りかかるかと思いきや、バックステップを踏んだ。
「『雷包』!」
閃光が走った。
雷撃が曲線を描きながら男に迫る、飛ぶ斬撃。
それを男は姿勢を低くして、躱わす。
しかし、それにより、閃光が男の視界を一瞬塞いだ。
その閃光に隠れるようにして、チヒロは上空から男を狙っていた。
「『次元砲』!」
「っ……!」
男を吹き飛ばし兼ねない容赦のない一撃。
近くに馬車があるから出力は抑え目ではあったが、それでも人一人を消し飛ばすには充分な威力だった。




