力の奔流
「うあああああっ!」
力は拮抗していた。
押しても押しても、押し返される。
このまま上へと方向転換出来れば、空に逃がすことが出来るけど、
エネルギーの奔流がそれを許さない。
なまじ、無理に力を逃がそうとした瞬間、暴発する未来が見える。
真正面から受け止めた上で、力を空へと跳ね上げないといけない。
だけど、それをしようにも剣が動かない――
いや、厳密には徐々に動いている。
――――私の方へと。
それは絶望的な事実だった。
全身全霊の一振りだった。
故に最大限の力を発揮したのは初撃――つまり、受け止めた瞬間だ。
後は徐々に力が落ちていくだけだ。
つまり、こうして耐えているのも時間の問題――――
やがて私は力尽き、このエネルギーは私ごと、この街を吹き飛ばすだろう。
結果は変わらないのなら――限界を超えてまで、力を込める必要はあるのか?
くじけそうになる度に徐々に剣は押し返されていく――
「……それ……でも……!」
最後の最後まで諦める訳にはいかない。
私だけの問題じゃない。
この一撃を許せば、何も知らない街の人達――そして、セレナやシンシアさんを巻き込むことになる。
だから、諦める訳にはいかない。
私は何か方法が他にないか、と思考を巡らせた。
だけど、無情にも力は限界を迎える。
いや、とうに迎えて、気力だけで、もっていた。
私は片膝をついてしまった。
後悔が頭をよぎる。
仮にこの場にセレナがいたなら、『神仙術』で体力の底上げが出来たかも知れない。
シンシアさんでも、こういった事態のために薬を用意してくれていただろう。
だけど、今となってはもう遅い――
私の両腕は悲鳴を上げるように震え出していた。
そんな絶望的な状況の中、その声は聞こえた。
「なにをやってるんだ!そのまま、しゃがめ!!」




