1018/1085
彼女がいない馬車 5
「いや、確かに特定の調味料だったり、アレンジだったりで本来の材料でないもので料理を作れる人がいるのはわかります。
でも、それには限度があると言うか……
少なくとも、お醤油とみりんもなしに肉じゃがを作れる人を他に知りませんわ」
「んー……なんていうか、要素だよ」
「要素?」
「料理としてのアプローチではなくて、科学として考えるというか」
「???」
シンシアはちんぷんかんぷんと言った風だった。
「ほら、タンパク質や炭水化物それにナトリウムやカリウム、カルシウム」
「え、調味料に使われてる成分ってことですか?」
「そう、その成分そのものはこちらの世界でもそう変わりはしない。それを狙ったバランスで組み替えてやればいいんだよ」
「はぁ、なるほど……って、納得しかけましたけど、口で言うより簡単ではない……そもそも人間業ですの!?」
「まぁ、流石にワタシにしか出来ない、かな?」
「……逆に言えば、チヒロさんは出来てしまうってことですのね」
「うん、だから、ワタシの作ったのには『遺伝子組み換えでない』って文言入れられないね」
そう言うとチヒロは悪戯っ子のように笑った。




