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彼女がいない馬車 3
「んー……」
とは言え、一緒にいることに不都合がある訳じゃない。
仕方ないといった形で、チヒロは寝転んだ。
スペースに余裕がある訳ではない。
セレーナは動けないし、貿易の品が所狭しと置かれているからだ。
どういった貿易品があるのか、という話はすでに話したあとだ。
まだ、チヒロが興味を持てる品だったなら、そこから話を広げられたのだが、残念ながらよくわからないモノで、
説明を聞いても、質問さえ思い浮かばなかった。
「……ごめん、少し眠るから何かあったら教えて」
「あ、はい」
チヒロは眠い訳でも、疲労感がある訳でもなかった。
ただ、気まずさから逃れるために、瞼を閉じる方法を選択しただけだ。
睡眠は充分足りていた。
だから、それは狸寝入りにしかならず、ついついと色々なことをチヒロはただ考えるだけになっていた。
ただ、時間の経過を待つために無駄なことを考えるだけの時間。
決して健全ではないことは、チヒロ自身わかっていた。
せめて、何か現状を打破する方法はないかと考えた。
「…………あ、そうだ。シンシアちゃん、今日ワタシが晩御飯作るよ」




