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彼女がいない馬車 2
別に嫌いあっているという訳ではない。
紆余曲折あって、色々迷惑をかけたという自覚はチヒロにもあるし、シンシアはそのことを許している。
ただ、それとは別に純粋な相性として、二人は相性がよくないのだ。
これまでなら、クリスだったり、セレーナだったり、蝶だったりが、一緒にいたので特に意識せずにいられた。
しかし、クリスも蝶もおらず、セレーナは喋られないことを考えると、自ずと二人の会話は増えることになり、思い知ることになる。
言わばクリスは潤滑油だった。
そう言う意味では二人は、お互いをクリスを介しての認知だった。
例えるなら、友達の友達。
認識がない訳ではない。
それなりに話すこともある。
しかし、共通の友人……クリスがいない状態で、二人きりになると気まずい。
元来の性質として、二人共コミュニケーションの巧者という訳ではない。
チヒロは勇者になるより前から、大人しい自己主張のしない子で、その性質は未だに残っている。
シンシアも仕事だから、交渉などで話すことは出来るが、ビジネスだから出来ることで、それがプライベートになると、どう接していいのかわからなくなる。




