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語るべきでない
実際のところそれが公平だと思う。
犯した罪は、その身分に関係なく裁かれなければならない。
……しかし、それはあくまで私の意見だ。
かつては私であったとしても、今、クリシュナなのはそこにいる彼であって、かつての私ではない。
だから、あえて意見は言わなかった。
「……そう、ですか」
「……なぁ、クリス。君は何者なんだい?」
「!?」
何かを察せられたか。
私が貴方の来世だと気付かれて何か不都合が起こるかと言うと、よくはわからない。
しかし、隠し通すべきだと思った。
昨日、ヤンカム王に対峙した時の私のように、結末を知れば、暗い感情を抱くことになるだろう。
それで未来が変わったとしても、それは決して好転ではないだろう。
「……今更、何を言ってるんですか?
私は私、それだけです」
「……」
クリシュナは私を見ていた。
暫く見つめられていると、クリシュナは苦笑した。
「まぁ、女性の隠し事を追求するのは紳士的ではないか」
「……」
クリシュナのそういうところに助けられたと思う反面。
私はかつてはこんな女たらしだったんだな、と嫌なことを考えた。




