最大火力
「――」
口許を赤い血で汚しながら、
少女はなおも立ち上がる。
金色の瞳を此方に向けて――
「貴女は――」
「『装備回収』!」
地面に転がっていた、少女の剣は浮かび上がったかと思うと、
少女の手元へと戻ってきた。
「な!?」
少女は逆手のまま、右手で持ち手を掴んだ。
「『抜刀―――――竜殺し』」
そして、呼びかけに応じるように、剣は禍々しく変形していく―ー
直感で理解する。
あれは抜かせてはいけない剣だと――
一振りでこの街が壊滅状態に陥りかねない。
「く――!!」
だけど、発動した以上、止めることが出来ない。
変に刺激を与えただけでも、暴発しかねない。
私に出来ることがあるとするなら――同じだけの力をぶつけ相殺し、
膨れ上がる余剰エネルギーを空に向けて放つ――
被害を出さない方法はそれしかなかった。
つい、奥歯を噛みしめた。
「やめてください!なにをしようとしてるのか、わかってるんですか!?」
無駄だと思いつつも、必死で呼びかける。
それに対する、彼女の返事は『構え』だった。
「『断斬波』――」
逆手のまま、右腕を引き絞る構え――私は覚悟を決めた。
「――はぁぁぁぁっ」
剣を天に向けて、魔力、気功、さらには体力まで……
あらゆる、私を持ち得るエネルギーを圧縮していく。
技でもなんでもない、私の最大火力を込めた。
「――『衝波』」
展開される衝撃波。
それを私は――
「うぁあああああっ!」
全身全霊の一刀で、受け止めた。




