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懸念
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朝の日差しが、部屋に差し込んでいた。
その光が私を微睡みの中から、引き上げていった。
「……」
腕立て伏せで上体を起こした時のように、私は両腕で身体を起こした。
「汗かいちゃったな……借り物のベッドなのに」
寝ている時に汗をかくのは当たり前だ。
それでも、身体を洗わずにベッドに倒れ込んだ罪悪感を今更ながら感じていた。
それに、ほとんど裸に近い格好だったというのもその罪悪感を加速させた。
魔法ですぐに身体を洗うという方法もある。
水と風を使って一気に洗い流してしまうのだ。
しかし、ここは室内だ。
一度水や風に変換した魔法を元に戻す方法など知らない。
つまり、処理に困るのでその方法は使えない。
「……外に出たら砂漠で汗と砂まみれになるのはわかっているけど、それでも、身体を洗いたい」
それは抗いがたい欲求だった。
まずは服を着て、外にいるメイドに声を掛けてーー
「……メイド?」
嫌な予感がした。
そういえば、あの後、ヒッチコックにまで気を配っていなかったが……




