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今は
私は"クリシュナ"としての残留思念に半ば乗っ取られていたのかも知れない。
それもずっと以前から。
どことなく、立ち振る舞いもクリシュナの影響を受けていたのかもしれない。
ともかく、いつのまにか、名前を失ったことで自分をクリシュナだと思い込んで……そういえば、お父さんやお母さん、他のきょうだい達はどうだっただろうか?
愛称として、クリスと呼ばれ続けていたけど、本来の名前を知っているはずのみんなは?
ショウ兄さんは違和感に気づいたけど、それ以外の家族はどうだったんだろう……
いや、そもそも、私がクリシュナを名乗っていた謎は解けたけど、それ以前の名前を失っている謎は解けていない……
ーー
「まぁ、一歩前進した、とは考えられるか」
そう呟くと、私の部屋の扉を開けた。
部屋に戻ると、ドレスを放り投げたい衝動を抑えて、なんとか丁寧に脱ぐと、そのままベッドに倒れ込んだ。
……疲れた。
体力的にというより、色んなことがあって気疲れによるものが大きい。
身体を洗う気力も出ない。
今はただ、眠りたい。
ひたすらに。
私は、その欲望に抗うことなく瞼を閉じた。




