1006/1085
クリシュナとクリス
改めて彼と私の関係を説明するのなら、"前世の自分"だった。
そう、私の前世が"クリシュナ"だったのだ。
前世や来世という概念を知ってはいたが、まさか同じ時間軸に存在出来るとは思っていなかった。
命だとか、死だとか魂とかが時間を飛び越えることが出来る……その証明だった。
だから、私がやったことのほとんどは、前世の"クリシュナ"としての経験と記憶を頼りしたカンニングのようなものだった。
とは言え、ところどころ記憶の欠落や、私の行動によるものか、異なる点もあったのだけど、大凡私の想定通りの結末となった。
……記憶の上で、この後の"クリシュナ"は決して順風満帆とは言えなかった。
理想と現実の板挟みになり、国家運営の難しさに四苦八苦することになる。
決して、幸福だったとは言いがたかった。
しかし、それはあくまでも、私の前世での話だ。
未来は変えられる。
現に、後に明るみになるヤンカム王の横暴を前倒しに出来た。
そう、未来は変えられることの証明だ。
この国が、彼が、幸福な道を歩けるかどうかは、
この"クリシュナ"次第なんだ。




