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試練のために訓練を

 族長から言われた試練とやらを合格する為、一ヶ月で6つの武器と魔法の経験を上げる特訓を考えた。

 剣に関しては、慣れているので問題は無いだろう。だが、他の武器に関しては難しい。

 槍、斧、短剣、弓、拳。槍は一度だけ使い、短剣は何度か使ったことはある。だが、斧や弓は使うどころか、経験すらない。拳は一応空手で経験はしているが、この世界で通用するかは分からない。魔法に関しては全属性の魔法が使える訳では無いし、使える魔法も習熟度は低い。とはいえ、武器とは違い魔法はいくつもある。どの属性魔法の習熟度を上げるか。に限ってくる。

 斧はヴォーデにでも師事を受ければ良いだろう。短剣はある程度慣れてはいるから、何度か使っていけば問題なくなるだろう。拳も徐々に慣れていけば問題は無いだろう。問題は槍と弓だ。経験も無ければ、師事する者もいない。

 さて、どうするか。

「サトル」

「わっ!?」

 な、なんだ。エミーリアか。驚かせないでくれ。

「むぅ……。サトルは、困ってることは無い? あるでしょ?」

「エミーリア、人の痛い所を突いてくるなよ……ああ、困ってるよ」

 なんだ? 特訓を手伝ってくれるのか?

「エミィが協力するのは禁止されてるから、難しいかな」

 だろうな。エミーリアが関わってる事だ。試練に協力なんてしたら、反則だしな。

「だから、助っ人連れてきたよ」

 えっ? それ反則じゃないの?

「エミィは連れてきただけ。あとはサトルが頑張るだけだよ」

 エミーリア……出来れば、居て欲しいんだけど。じゃないと、槍を持ったエルフの男が殺気を俺に向けて放ってるし。

「おい、人間族。俺が槍に関して、特訓してやる。三日でマスターしろ」

 そんな、ご無体な……。

「絶対にエミーリア様を、ゲワルに渡すんじゃねぇぞ!」

 ゲワルという者が、現在この里で優れた男なんだな。そして女を物のように扱う最低な奴。

 そんな奴に渡すわけにはいかない。

「覚悟は良いか!」

「ああ!」


           ◆       


 三日間の特訓は、過酷といった方が正しい。この男、俺を殺す気だろ。殺気がダダ漏れだ。

 一日目はほとんど手も足も出なかった。二日目は1割程度から3割程度まで反撃が出来た。

 ちなみに槍は木で出来ており、先端も尖ってはいない。

 槍というよりは棍といった方が正しいかもしれない。

 三日目には、半分以上反撃が出来るようになった。

「三日でこれだけ出来たら、上出来だ。じゃあ、これ」

 槍の男に白い紙を渡された。

 なんだ?

″次に特訓を師事する者に斧と短剣の特訓を頼め″

 ……斧と短剣。斧はヴォーデに頼もうとしてたし、短剣は自力でなんとかしようと思ってたのに。今回みたいな事があと2回……いや、あと数回あるのか……。嫌だなぁ。

 紙に書かれた場所へ向かうと、ヴォーデが筋骨隆々の男と戦っていた。いや、正確には訓練をしていた。

 互いに持つ武器は木で出来た大きな斧。当たると痛いが、死ぬことは無い。当たり所が悪くなければ。

 筋骨隆々の男の他に、細く背の低い少年が木にもたれかかり、本を読んでいた。

 ヴォーデが訓練している筋骨隆々の男が斧を持っている。ということは、あの少年は短剣を使う。ということだろう。

「ああ、やっと来たね。待ちくたびれたよ」

 少年が俺を見つけるなり、本をポケットに仕舞い、こちらへ来た。

「君がエミーリア様を巡ってゲワルと戦う人間族?」

「まあ、そういうことになるな」

 なんだ? 余所者がしゃしゃり出るなってか?

「じゃあ、短剣の特訓を始めるね。七つの試練は大変だから、少しきつめに行くけどいい?」

 槍の特訓の三日間みたいな感じか? まあ、慣れたし問題は無い。

「大丈夫。短剣は一応使ってはいるようだから、2日くらいで終わると思うよ」

 一日早くクリア出来るという訳か。これは楽出来そうだな……。


           ◆       


 ……。

「……はぁ。全然ダメだね」

 すみません……。

「まあ、頑張り次第で早く終われるから、頑張ってね」

 これは、より気を引き締めないといけないな。

 ……短剣の特訓を無事終わらせることは出来た。ただ、予定より三日掛かってしまった。

 槍の特訓が三日。短剣の特訓が五日。予定では、5日間で槍と短剣の特訓を終わらせ、二日休むはずだった。けど、実際は八日。2日間の休暇も入れても一日オーバーしてしまった。

 休みなしで斧の特訓を始めることとなった。斧は慣れてないため、四日間の日程を予定している。

「おう! 俺がびっしりと鍛えてやるから、覚悟しろよ」

 笑顔で言われているから、なおさら怖い。エルフにもここまで筋骨隆々の人もいるんだな。

「さて、さっそく行くぜ!」

「えっ──っ!?」

 いきなり攻撃してくるなんて……聞いてない。

「ん? 何寝てんだ? ヴォーデは、しっかりと受け止めて反撃してたぞ」

 いや、ヴォーデと一緒にされても……。

「こりゃあ、どれくらい掛かっか、わかんねぇな」

 出来るだけ、頑張ります。

「まあ、時間は限られてんだから、気引き締めて行けよ」

 ホント、返す言葉もございません……。

 結局、特訓は一日オーバーの五日も掛かってしまった。

 槍は三日、短剣と斧はそれぞれ、五日で計十三日。半月も掛かってしまった。残るは四つ。

 弓、拳、剣、魔法だ。拳、魔法、弓、剣の順でやらなければならない。それもあと約十六日で。つまり、一種を四日で終わらせなければならない。

 厳しいな……。

 槍の時と同じく、白い紙に書かれた場所へと向かう。

 指定された場所には、若い女性と男性が立っていた。まあ、長寿のエルフだから若いといっても、何百歳の可能性もあるけれども。

「待ちくたびれたぞ。何をしてたんだ」

「全くね」

 返す言葉もございません。

「時間も惜しい。実践形式で、二人纏めてやるぞ」

「ええ、悪いけど。ゆっくり教えられるほどの時間はないわ」

 武器を使わずの訓練。使えるのは、魔法と拳のみ。果たして、いけるだろうか?

「さっそく行くぞ! おりゃぁ!」

「──っ!? フッ!」

 転生したにも関わらず、身体は覚えているようだ。男の攻撃を躱し、反撃を与えることが出来た。まあ、防がれたけど。

「ほう。俺の攻撃を躱しつつ、反撃まで入れて来やがるとは。なかなかやるじゃねぇか」

「──《ファイアショット!》」

 うわっ! 危ないな。もう少し気付くのが遅れたら、直撃だった。

「むっ、あれを躱すなんてやるわね」

 褒められて喜べるほど、余裕はない。

「じゃあ、これならどうだ!」

「私も続くわ」

 ちょっ!? 同時攻撃は、流石に捌けないって!

「流石に二人同時はキツいか。なら、少し手を抜くから反撃までやってみろ」

 やってみろと言われても……。

「おりゃ!」

「《炎の弾丸よ、撃ち抜け。ファイアーショット》」

「わわっ!?」

 いたたた……一回躱すのがやっとだ。

「慣れるまで続けるぞ!」

 ……うぅ。辛いよ。


           ◆      


 流石に一日続ければ、否応なしに身体が慣れてくる。少しずつではあるが、五日目には最初に受けた同時攻撃も躱して反撃するまで出来た。

 これで、18日目。残りは12日。自己鍛錬は三日欲しいところだが、そうなると9日しかなくなるし休みも入れれば、最低でも残りは7、8日になる。

 次に指定された場所には、弓を持った男が立っていた。

「待たせてしまい、申し訳ない」

「いや、構わない。私に教えられるのは、弓の基本だけだしな」

 えっ? それじゃあ、試練乗り越える事出来ないんじゃ?

「だから、あとは自己鍛錬だ。余程、物覚えが悪くなければ、 半日で覚えられる」

 ……うぅ、善処します。

 男の言う通り、半日で覚えることが出来た。あとは反復練習なんだろう。

「役に立てなくて、悪いとは思う。本来なら、シュティルが教えれば、良かったんだがアイツ無愛想というか、口下手というか……」

 この男より弓の扱いが上手い者がいるのか。しかし、無愛想とか口下手とか。それは教えるのは難しいな。

「あとは、剣だけか……」

 半日で終わったから、自己鍛錬に多くの時間が割ける。休息も。

「剣の訓練だが、このまま続けるが大丈夫か?」

 えっ?

「さあ、剣を構えろ」

「は、はい」

 思わず、返事してしまった。

「行くぞ……」

 ……これ、大丈夫? この実践形式って間違えれば死ぬんじゃ……。

「大丈夫だ。様子を見ながら、訓練をつけるからな」

 ……楽と思ったら、スパルタだった。


           ◆       


 結局、剣の訓練は三日掛かった。全ての訓練を21日半も掛かった。

 ここまでほぼ訓練だった。次の日から3日間、大いに休んだ。休養は必要だからな。

 休養後、自己鍛錬に入った。

 残り6日間の内、5日間を自己鍛錬に。残りの一日を休養に使った。

 あっという間の一ヶ月だったが、だいぶ強くなれたとは思う。

 そして、試練が始まる。

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