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再会と出立

 残された俺とエミーリアは、泊まっていた宿屋へと向かっていた。

 まあ、なんだ。何もすること無いし、部屋でだらけてようかな。と思ってる。

 ……しかし、自分の右腕が気になる。何故かと問われれば、俺の右腕には柔らかい感触が二つ。エミーリアが俺の右腕に身体を寄せている。背は低いのに出ているところは出て……ゲフンゲフン。落ち着け、俺。これはエミーリアなりのスキンシップ。そうだ、そうに違いない。

「おや、誰かと思えば」

 ん? 俺に言ってるのか──ああっ!

「えっと、確か名前はえ、エヴァ……」

「エヴェレット。人の名前を間違えるのは失礼に値しますよ、サトル様」

 そうだ! 占い師(フォーチュンテラー)のエヴェレットだ。

「確か、アルクス振りだったはずですが」

「ええ、その通りです」

 懐かしいな。あれから数か月か経ってるのからな。

「エヴェレット様。そんなのに付き合われる必要はございません。お前もエヴェレット様の邪魔をするな」

 この子は確か、受付の子だったな。確か、名前はケルナーだったな。

「ケルナーの事は覚えているのですね。こういう子がお好きなのですね」

「「なっ──!?」」

 いや、断じて違う。たまたまだ。

「エヴェレット様、冗談が過ぎます。こんな男に好かれたところで!」

「サトル? 浮気はダメだよ?」

 ケルナーは置いといて、エミーリアは浮気はダメと言われても浮気していないし、そもそも俺とキミ、付き合ってないと思うんだけど。

「もうケルナーは。冗談にいちいち目くじらを立てては疲れるわよ?」

「エヴェレット様が、冗談を言われるのを控えて頂ければ、私の気苦労も減ります」

 ケルナーも大変なんだな。しかし、あの時は分からなかったエヴェレットの一面を見れた気がする。

「それはそれとして。……彼女は?」

「ああ、彼女はエミーリアだ。グラナート村での仕事で会った魔術師だ」

 うん、嘘はない。なのに、エミーリアが不満そうな顔をしている。何故?

「ところで、お二人はどちらへ?」

「はい、グランデ大陸へ」

 グランデ大陸? えっと、どこだっけ?

「このメディアル大陸の北西に位置する大陸で三大大陸の一つです」

「三大大陸?」

 何それ?

「はぁ……メディアル大陸、グランデ大陸、ネグロ大陸の三つだ。それくらい覚えておけ」

 はぁ、常識だったんだ。それは失礼しました。

「ケルナー、貴女も昔は知らなかったでしょう?」

「──エヴェレット様!?」

 なんだ、自分だって知らなかったんじゃないか。

「それで、そのグランデ大陸へは何しに?」

「仕事です」

 ああ、占い師の仕事か。しかしまあ、海を越えた大陸の人間から依頼が来るとは、なかなかの有名人なんだな。

「そうそう。そういえば一つ聞きたいことがあったんだ」

「……なんでしょう?」

 いや、いきなり訊くか? と思うけど、今思い出したんだから、仕方ないでしょう?

「以前に占って貰ったとき、俺が異世界からの転生者と言ったけど、それは過去を見たのか?」

「……もしや、疑っておいでで?」

 うん、実は少し疑ってた。何も知らない者がいれば、田舎者か外国の人間しかいない。だが、田舎者だろうと外国の人間だろうと、この世界のことはある程度知っているはず。それを知らないという事は、異世界の者しかいないだろう。と推理出来ると思う。実際、彼女はそう推理したのでは? と俺は考えている。

「……半分正解ですね」

「半分とは?」

 過去が見えないことが? それとも推理したことが?

「過去を見ようとはしました。ですが、見れませんでした」

 それは、どういう事?

「本来ならば、過去を見ることは可能です。ですが、一部を除いて過去を見る事は出来ません」

「それが異世界の人間。ということか?」

 まあ、それなら有り得そうだけど完全な納得には至れない。

「いえ、正確には転生者の過去が見れない。ということです」

 転生者の過去は見れない? 異世界の人間の過去を見れない。というのとは何が違うんだ?

「異世界の人間にも2種類いることは御存知ですか?」

「えっ? そうなのか?」

 初耳だ。異世界に来る方法は、転生以外にもあるのか。

「私も詳しくは、なんとも。ですが、異世界からの来訪者は転生者と召喚者の2パターンがあることは分かっています」

 異世界転生と異世界召喚? 何が違うのか? よく分からない。そういえば、会社の後輩がよく読んでたな。異世界へ行って活躍する主人公の小説。正確にはライトノベルというものらしいが。俺にはさっぱりだったからな。漫画とかゲームとかなら、学生時代に友達との付き合いでやってたけど、ライトノベルは知らない。後輩の話をしっかり聞いておくべきだった。

「私も聞いた話なので、詳しくは分かりませんが。異世界転生は、元の世界で命を落とした人間が異世界へ召喚される。異世界召喚は、元の世界から生きたまま異世界へ召喚される。ということらしいですね」

 なるほど。つまり生きてるか死んでるか。の違いか。

 あれ? って事は、俺は元の世界では死んでるって事か!?

 ああ、短い命だったな。元の世界での俺。

「続けますね。それで異世界召喚者は過去が見れますが、異世界転生者は見れません。サトル様、貴方の過去も……」

 なるほど。俺の過去が見れなかったから、異世界転生者だと判別出来た訳か。納得出来ない疑問点が浮上してきたな。訊いてみるか。

「エヴェレット、あなたはさっき『聞いた話なので』と言ったが、誰から聞いたんだ?」

「誰から? 貴方のような転生者や召喚者にですよ」

 何? 俺以外にも似たような境遇の人間がいたんだな。会ってみたいな……。願わくば、同郷の人間であれ。

「残念ですが、皆亡くなってますよ」

「何っ?」

 それは残念。転生者と召喚者は年寄りだったのか。

「ちなみに異世界からの来訪者で私が知っているのは、貴方で4人目です」

 3人とも年寄りとは……4人目で俺とか、ツイテないな。

「しかし、19年で4人か……多いな」

「サトル、異世界からの人間は、そんなに頻繁には来ないと思うよ? エミィがサトル以外知らないだけかもしれないけど」

 えっ? でも、エヴェレットは19歳だし。約19年で俺を含め、4人の異世界からの人間が来ないと辻褄が合わない。

 ──っ! まさか?

「エヴェレット、あなたは本当に19さ──」

「死にたければ、その先の言葉を言うがいい」

 ヒィィィィィ! 右の頬に鋭い何かが掠った!? ケルナーの両手の内側に光る何か。恐らく、手投げナイフ的なやつだろう。俺もまだ死にたくないから、黙ろう。

「ケルナー、やめなさい。サトル様、その考えで間違いありませんよ」

 って事は、エヴェレットはまさか……!

「耳長族?」

「ええ、耳は魔法で人間族の耳に変えてますが、私は耳長族です」

 エルフ……確か、長寿で人の倍以上生きる生き物。ってことは……。

「ええ、サトル様のお察しの通りです」

「……ということは、エミーリアも?」

 俺は年上にタメ口を利いていたのか。謝らねば。

「耳長族は、自分の年齢を言わないモノなのです。年齢を告げるときは、人間の年齢で換算して告げます。彼女はそれほど、サトル様を気に入っているということでしょう」

 そうなのか? それより、異世界からの人間についてだ。

 詳しく訊かなくては。

「分かりました。お話ししましょう。ですが、ここではなんですから私達が泊まっている宿にでも」

 俺達はエヴェレット達に付いて行き、彼女達が泊まる宿で異世界からの人間について聞いた。

 異世界からこの世界へ来る周期は約100年。100年に一度、召喚または転生してくる者がいるらしい。人数自体は不明らしいが、異世界から来る者達は必ず珍しい職業に就くらしい。

 エヴェレットが最初に出会った青年は侍という職業。異世界からの転生者。まあ、俺と同じだな。

 次に2人目。同じく青年で竜騎士という職業。彼は異世界からの召喚者だったらしい。

 そして3人目は少女。職業は忍者。彼女も異世界からの転生者らしい。

 1人目と3人目は俺のいた世界にも居たな。昔だけど。

 2人目はゲームとかに出てくるやつだな。

 4人中3人が転生者か。なかなかの確率で転生者が多いようだ。

 俺達は、その後エヴェレット達と別れ、自分達の宿へと戻る。ちなみにケルナーは混血耳長族らしい……どうでもいいかもしれないけど。

 エヴェレット達と出会って別れてから、三ヶ月が経った。

 シャロンとヴォーデもレベルが上がり、俺と並んだ。

 俺は三ヶ月間、エミーリアの付き添いで買い物行ったり、ご飯食べに行ったりで疲れたけど、リフレッシュは出来たし、エミーリアには感謝しないとな。

 船も修理が終わり、いつでも出航出来るとのことだ。

 乗船を望む者達が群れ成してチケットを買い求めているが、俺達は国王陛下の力で優先的に乗ることが出来た。

 ちなみにイスラ島には、まずグランデ大陸の玄関港であるサグワンという港を経由してイスラ島へと向かうとのことだった。

 エミーリアの故郷であるイスラ島。はてさて、何が待っているのやら。

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