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約定

 俺とエミーリアは、兵士に案内され街の北側にあるセイクリッド王国の城へと来ていた。

「はぁ……大きいな。城なんて初めて見たな」

「エミィも初めて。初めて者同士だね、サトル」

 確かにそうだけど、わざわざくっつかなくても……。

「おい、ここからは国王陛下が住まわれている城内だ。おかしな真似は控えろよ」

「あ、ああ……」

「むぅ……」

 注意されてしまった。気を付けよう。

 城門から中に入ると、赤い絨毯(じゅうたん)が前方の階段の先まで続いている。ゲームとかに出てくる城って感じだな。

「陛下は階段の先におられる。お前らだけで行け。陛下に粗相の無いようにな」

 えっ? 案内はここまでなのか? それで良いのか? 国王に怒られないのか?

「サトル、早く行こ」

「あ、ああ」

 仕方ない。行くとしようか。


             ◆         


「お主が黒髪の剣士か?」

 いや、黒髪で剣を使うけど、剣士かと問われたら、違うとも言える。どうしよう。嘘吐くと牢獄とかに軟禁されそうだし。

「陛下、それだけの説明では、この者がその者か分かりませんし事情を知らぬ彼の者が困るかと」

「おお、そうであったな。お主、グラナート村の事件を知っておるか?」

 グラナート村の事件? 娘さん達が連れてかれていた件の事か? それなら俺も関係してるから答えておこう。

「い、一応。村の娘が攫われた事件の事でしょうか?」

「うむ。実はその事件を解決した者を探しておるのだ」

 ああ、なるほど。それなら俺……しかいないか。王直々のお呼び出し。なんだろうか、何かやらかしたかな?

「で、お主。名前はなんというのだ?」

「あっ、はい。私はサトル・サガミハラと申します」

 つい癖で畏まってしまう。

「そこまで畏まらずとも良い。サトルよ、主は耳長族(エルフ)の少女と二人で旅をしているのか?」

「二人で、ですか? それは違い──っ!」

 エミーリアさん、背中をつねるの止めて貰いせんか?

「(サトルのバカァ……)」

 エミーリアが何か言ったようだけど、聞き返すのも失礼だろうし、止めておこう。

「まあ良い。それで無事に事件を解決してくれた主へ何か褒美でも。と考えた訳だ」

「褒美……ですか?」

 褒美と聞くと、何かお金を貰えるとか美味しい料理食べさせてくれるとかそういう類いのものだろうか?

「サトル、船出して貰おうよ」

 エミーリアが褒美の内容の提案をした。あの、そういうのは俺にしか聞こえないように話して貰えませんか?

 そりゃあ、船出してくれれば楽だろうけど。多分無理だと思うよ。この国の港にある船は全て航行不能まで破壊されてるって話だし、王族専用船だろうと多分漏れなく破壊されているだろうし。

「期待させて悪いが、我が国全ての船は何者かに破壊され、航行不能状態なのだ」

「王族専用の船もってことですよね?」

「……うむ」

 一応、聞いておかないとね。エミーリアが訊きそうだし。

「むぅ……」

 そんなふて腐れた顔しなくても……。ここ、仮にもお偉い方がいる場所だよ。連れてきたあの兵士も言ってたじゃないか。

″粗相の無いように″って。

「なるほど。主らは今、船が必要なのだな。では、修理が終わり次第、優先で乗れるように便宜を図っておこう」

「えっ? あ、ありがとうございます」

 まさかの問題解決。まあ、修理に三ヶ月くらい掛かるけど。そこはレベル上げとかしておけば良いと思うし。俺は休むけどね。

「修理には三ヶ月程掛かります。修理が終わるまでは、ルミエールに宿を取って待って貰います」

「街から出たら、駄目。ということでしょうか?」

 王の側近らしき男が口を挟んできた。三ヶ月街から出るなとは、ヴォーデあたりが発狂しそうだな。暇すぎて。

「概ね間違いはない。ただ外出時は、君もしくは仲間の誰か一人でも街に残るか。という条件になる」

「街を出る際、残るのは都度交替しても?」

「交替は認められない。君もしくは、そこの耳長族の女。のどちらかだ」

 俺とエミーリアだけか。まあ、街からってことは、宿からは出ても良いって事だろうし。

 それに俺が残れば、問題解決だろうし。ヴォーデとシャロンにはレベル上げとかしてもらうのも悪くない。

「分かりました。しかし──」

「宿泊費に関してはこちらで受け持つ。安心して休むと良い」

 国王様に訊きたいこと答えられたな。まあ、良いか。問題解決したし。三ヶ月待つの面倒だけど、妥協も必要だ。

「話は終わりだ。呼び出して悪かった」

「いえ。ありがとうございました。お陰で助かりました」

 半年以上待つよりはマシだろう。

 俺とエミーリアは、王様に頭を下げ退出すると一目散にギルドへ向かった。

「……修理までの期間短縮はともかく乗船に関しては便宜(べんぎ)を図ってくれたのですね」

「まさか、仕事を解決しただけで魔術師を仲間にしただけじゃ無く優先で乗れるようにしてくれるなんて、″メーラを世話すると肉にもミルクにもなる″だな」

 ヴォーデ、何それ?

「ヴォーデ……恥ずかしいから、少し黙ってて」

「そこのバカが何を言いたいのか分からないけど、″耳長族の矢は二羽の鳥をも貫く″ってこと?」

 シャロンが真っ赤になってヴォーデに説教しているのは、置いておこう。それよりエミーリアのそれ。一石二鳥みたいなことを言いたいのかな?

「イッセキニチョウ?」

「ああ、そうか。知らないよな。要は一つの石で二羽の鳥を倒して手に入れる。ということだよ」

 多分あってるはず。

「エミィの言った事と一緒だね。やっぱりサトルとエミィは相──」

「目を離せば、妄言を。止めて貰いませんか? パーティの輪が乱れますので」

 シャロン、何かにつけてエミーリアに突っかかるな。どうしたんだろうか?

「お前も大変だな」

 ヴォーデ、そう思うなら止めて欲しいのだけど。あとメーラって何? 肉とかミルクと言うのだから、牛とかかな?

「パーティの輪が乱れるって意味分かんない。エミィは輪が乱れる事言ってないもん」

「まあ、主に……だな」

 エミーリア、シャロンを煽るような発言は止めてくれ。それとヴォーデ、シャロンを見て溜め息吐いてるけど、どうした?

「シャロン、最近おかしいぞ。何かあったら、相談に乗るぞ? エミーリアは毎回、シャロンを煽らない。ヴォーデは……見てないで助けてくれ」

 うん、これで良し。これで万事解決!

「むう。サトルがそう言うなら、控える」

「オレには何も出来ねぇよ。これに関しては」

 エミーリアは分かってくれた。ヴォーデは何か意味ありげな返答。シャロンは頬を膨らませながら不満そうな顔をしている。何かおかしな事言ったか?

 ん? ヴォーデ、右肩に手を乗せて首振ってるけど、何? やれやれみたいな顔しないでくれないか?

「……ヴォーデ、外でレベル上げしに行こう」

「ああ、そうだな」

 ああ、二人が行ってしまった。シャロンには失礼なことを言ったのかもしれない。あとで謝っておこう。

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