プロローグ
俺達はグラナート村を後にし、ルミエールへと向かっていた。ルミエールへは、仕事完了の報告と報酬受取。そして港へ行って、エルフの集落へと向かう。とエミーリアが話していた。彼女自身、王都ルミエールへ船で来たらしいし。
「それで、その用事ってのは急ぎなのか? そうじゃねぇなら後回しにでも──」
「急ぎなの! 魔王討伐なんてやってたら、期限過ぎるじゃん!」
何やら、エミーリアの用事には期限が定められてるらしい。
用事とは、なんだろう? 気になるところだけど。あの剣幕だと、聞いても答えてくれるかわからない。
「急ぎなら尚更、どのような用事か教えて欲しいのですけど」
「他人に教えちゃいけないの。言ったら、ダメなの!」
ああ、教えたらそこで失敗。的なやつか。それなら、答えられないのも合点がいく。
「ちなみにだが、その用事の期限はいつまでなんだ?」
「一年。言われたのが四カ月前だから、あと八カ月かな」
魔王討伐が、どれくらい掛かるかは分からないが確かに八カ月では無理かもしれないな。
「分かった。だけど、エミーリアの用事に、あまり時間は掛けられないと思う。それでも良いだろうか」
「うん! 流石、サトル。話が分かる!」
さて、あとは二人がそれで納得してくれれば。だけど。
「オレは構わないぜ。あまり時間掛けなけりゃ」
「……サトルさんの指示に従います」
ヴォーデは納得してるようだけど、シャロンは納得してはいるが、少し不満があるようだ。
「シャロン、何か不満でもあるのか? 不満そうな顔をしてるようだけど」
「……いえ、不満なんてありません」
不満あるって顔してるじゃないか。これ以上言ったら、怒られそうだし。止めておこう。
「……ところで、これはなんだろうか?」
「ん?」
ん? じゃない。エミーリアさん、俺の左腕に自分の腕を絡ませないでくれません? 右から感じる視線に耐えられないんです。背筋が凍える視線が。
「サトルは嫌?」
「そ、そんなこと──い″っ!」
痛っ! シャロンさん、俺の右腕を摘ままないでくれます?
とても痛いです。
「サトルさん、気を抜かないで下さいね。ここは街の中じゃないんですから」
「は、はい……」
シャロンが怖い……。俺、何もしてないんですけど。
「サトル、大丈夫? 怖い女に目を付けられるなんて、可哀想に」
「──っ!」
ひぃ!? シャロンさん、顔怖いよ!?
「……とりあえず、先急ぐぞ」
ヴォーデ、助けてくれないんだね。薄情者。
「それなら、私も!」
──おっ!? シャロンさん? 控えめな膨らみが……二つ。俺の腕に──い″っ!
「サトル、浮気はダメ」
いや、浮気って……。ヴォーデから冷たい目で見られ、二人に挟まれ、歩かされるなんて。
出来れば、早く解放して欲しい。という切なる願いが叶うのは、いつになるのやら。