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クリスマスプレゼント

作者: 音宇ゆずる

「ね、会いに来てくれる?」

画鋲で古びた壁に刺した日めくりは、赤いボールペンで12/24の日をマークされた。

掌に乗せる小さい箱を見つめて、少年は一周間前、少女との電話を思い出した。

「え、急にどうした?」

「急にじゃないよ、3年も付き合ってるじゃない」

「けど、いつも会ってくれないのはそっちだろう」

少女とは、3年前、あるオンラインゲームで出会った。

その頃、大学に入ったばかりの少年は、上手く周りの人に打ち解けず、一時期、アパートの部屋にこもってオンラインゲームの世界に浸った。

ある日、「パーティー組みませんか?」と、いつもゲーム中で見かける少女からメッセージが送って来た。

それから、二人は段々距離を縮めて、最終的に恋人になった。

だけど、この3年間、写真くらいはあるが、少女は少年に顔を合わせることは、一度もなかった。

「……うん、でも、今会わないと、もう会えないかもしれない」

「え?それってどういう——」

「私ね、実はかなり重い病気あるんだ」

「え……?」

「ずっと入院してるから、貴方に会うことができないし、ビデオ通話でさえ、病院にいるのがばれるからダメだった」

「ちょっと待って、一体——」

「ごめんね、今まで黙ってた」

「……!」

直ぐに受け入れることはできないだろうか、少年は声を震わせる。

「だったら、どうして今になって……」

「……悪化しちゃった、病気が」

「!!」 

「来週クリスマスの日で手術を受けることになった。ちょっと危ない手術だけどね」

「危ない……?」

「……成功率は50%だって」

「何っ……!」

「まぁ、成功しても私の寿命はもってあと3年ぐらいらしいけどね」

どこか他人事みたいに、少女は軽々残酷な事実を告げた。

だが、なんてこともないような声に潜んだわずかな寂しげ、少年はそれを聞き逃さなかった。

「だから、会いたいの……会いに……来てくれる?」

「おい、大丈夫!?」

ふと、スマホの送話口からの声が弱々しくなった。

心配で焦ていた少年だが、少女はただ消え入りそうな声で笑う。

「待ってる……よ」       


*******


スマホの画面に映された黒いロングストレートの少女の写真を見ながら、少年は片手の拳を強く握る。

ピンク色のヘアピンで固定した前髪の下に、少女は可愛らしく微笑む写真だ。多少の弱気を感じるが、大病を抱えている何てまるで見えない。

会いたいの……会いに……来てくれる?

「……」

一周が経っても、少女の虚弱な声は鮮明に頭の中で響く。

成功か失敗かは五分五分、成功しても、もって3年の命。

理不尽極まりない過酷な運命、しかし、少女は受け入れることしかできない。

規律に揺れる電車の中、少年は自分しか聞こえない声でつぶやく。

「待ってて、会いに行くから」


********


病院に着いた時、月はもう高い空に掛かっている。面会時間が終わるまでは残りわずかだ。

面会者名簿の記入欄は、少年が来た少し前に、少女と同じ苗字を持つ二人が帰った時間が記された。おそらく彼女の両親だ。

少年は病室まで駆けつけて、乱れた呼吸を整える暇もなく扉を開いた。

すると、思わず息を吞んだ。

「ありがとう、来てくれたんだね」

「……うん」

ベッドの上に、ピンク色のヘアピンを付けている少女は優しく微笑む。

写真通りおとなしそうで綺麗な少女、だが、写真よりずっと蒼白な顔色だ。

少年は少女の傍にしゃがんで、両手で彼女の小さい左手を包む。

「冷たい……」

「暖かいね、貴方の手」

明らかに低い少女の体温、それでも彼女は幸せそうに言った。

二人の間に、しばらく沈黙が続いた。

「今日はクリスマスイブだね」

「あぁ」

「ね、サンタさを信じるの?」

突然、少女は少年に問いかけた。

「え?」

「私ね、サンタさんがいると信じてる。子供の頃から、ほとんどの時間は病院にいた。病院から出ても、静養しないといけないから、家でオンラインゲームばかりで……おかげで貴方に出会えたけど、ふふっ」

「……そうか」

「冬はよく体調が崩れるから、クリスマス何て、いつも病室で過ごした。だから、もしサンタさんがクリスマスプレゼントをくれたら、私もみんなと同じ、キラキラで幸せなクリスマスを過ごせるかなって、ずっとそう思ってた」

憧れが満ちる少女の横顔を、少年はなぜか無性に悲しく見えていた。

「……サンタさんがいるかどうか、僕には知らない」

「だよね……」

「けど、サンタさんの代わりに、君にプレゼントをあげることができる」

少年はポケットから小さい箱を取り出す。

それを開けた瞬間、少女は目を見張った。

銀色の指輪。

「この手術が無事に終わったら、僕と結婚してください」

「え……?」

「まだ……何もできないただの大学生だけど、僕、頑張るから。来年、再来年も……絶対に、キラキラで幸せなクリスマスにしてやるから。だから……残りの3年、一緒に過ごそう」

「……!」

長い間、少女は何も言えずに、震えながら涙を流す。

そして、赤く染めたその顔から、幸せな笑みが浮かぶ。

「こんな私でよければ、お願いします」

嬉しみと悲しみをこらえて、少年は少女の細い指に指輪を付けた。

「キラキラだね」

「クリスマスに似合うだろう」

嬉しそうに笑っている少女の手を、少年は再び強く握る。

「約束だよ。明日、必ず無事で帰って」

「……うん」

病室に飾った小さなクリスマスツリーの隣に、誓いを交わした二人は、唇を重ね合わせた。


*******


手術前に挨拶をした少女の両親は、少年の隣に椅子に座って泣いている。

少年の全身が震えて、手で持っていた紙コップを落として、水が病院の床に散らばった。

「どう……して……」

三人の前に、年を取った医者さんが辛そうな顔で伝える。

「申し訳ありません、残念ですが……」

力が入れず、少年はそのまま椅子に座る。

どうしようもないほど悔しくて、拳で自分の太ももを叩くことしかできない。

「何でだよ!約束……したのに」

「最善を尽くしましたが、わずか5%の成功率は、我々にとっても……」

予想外の言葉に、少年は思わず頭を上げた。

「え、5%!?」

「はい、非常に無理な手術ですので……」

50%じゃ……なかったんだ。

項垂れでいる少年に、医者さんは一つの封筒を渡す。

「こちらは、彼女から預かった物です。もし手術が失敗したら、貴方に渡すと」

丁寧にお辞儀をして、医者さんはその場を後にした。

少しの困惑が混じって、少年は封筒を開いた。

一つの手紙があった。

「手紙……?」

涙の跡がついた白い紙に、綺麗な文字が並べている。

少年の驚きを隠せず目じりから、涙がにじみ出る。


「愛する夫へ

この手紙を読んでいる時、私はもういないかな。手術の成功率に噓をついてごめんね、5%の絶望を抱えて私を会いに来るより、50%の希望を持って私を応援しに来るほうが、貴方が辛くないと思うから。無事で帰る約束も守れなくてごめんなさい。一度も会ったことのない私を会いに来てくれて、プロポーズまでしてくれて、本当にありがとう。貴方が私に指輪をつけてくれた時、指輪だけじゃなく、その瞬間、私はこの世界のすべてをキラキラにみえたんだ!本当に、とてもとても嬉しかった。昨日が初対面なのに、貴方がどれだけ私を愛してくれるのを、きちんと伝わってきた。

覚えてる?私はサンタさんがいると信じるって。私はもう、サンタさんから素敵なプレゼントを貰ったよ。昨日の夜、貴方が病室に入った瞬間に気づいた、貴方こそ、サンタさんが私にくれた、初めて、そして最後のプレゼントだ。一緒に次のクリスマスを過ごせないのはちょっと残念だけと、もう十分だ。貴方のおかげで、私は誰よりもキラキラで幸せなクリスマスを過ごせたんだ!だから、悲しまないで、私は、幸せだったよ。

                                      メリークリスマス」


もう無理だ。

これ以上少年に涙を堪えさせるのは、もう無理なんだ。

我慢できずに、少年はただただ、泣くことしか出来なかった。

大泣きながら、少年は思う。

この想いは、彼女のところまで届けるかな?

 「愛する妻へ                           

            メリークリスス」


台湾人です。


日本語は下手なので、文型などの間違いがあれば教えてください。


よろしければ、小説の感想も知りたいです。


では、メリークリスマス!

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