1 ヤンデレ少女を拾いました
さらに自分の首を絞める作者……だって、書きたいんだもん!というわけで、ヤンデレ依存少女ですw
それは本当に偶然だった。買い物がてらちょっと遠くのスーパーに半額品目当てに向かったのだが、外は土砂降り。傘をさしてても地味に濡れるからちょっとテンションが下がりつつ公園を通りがかった時にそれを見つけた。
「なんだあれ……」
雨の中、傘もささずにベンチで丸くなっている女の子がいた。ん?というか、あの制服……うちの学校のだよな。遠目からでもわかる透き通るような銀髪ーーーああ、あれか。確か1年にすっごい可愛い女の子が入ったとか、友人の浜口が言ってたな。
なんでも珍しい銀髪に片目を眼帯で隠したミステリアスな女の子とか言ってたっけ。それを聞いた時は結構どうでもよくて流してたけどさ。
にしてもその不思議ちゃんはこんな雨の中、公園で傘もささずに1人で何してるんだ?まあ、どう見ても何かあった的なオーラ出してるけど……うん、関わらないが吉かな。
そう思ってスルーしようとするが、その前に目があってしまった。眼帯で片目は隠されてるが一瞬俺の姿を捉えてから……また俯く。はぁ……そういう反応が1番困るんだよなぁ
そうため息をついてから俺はゆっくりと彼女に近づいてから彼女に傘をさして言った。
「風邪ひくよ?」
「……ほっといてください」
俯きながらそう言うけど……だってねぇ。
「折角の綺麗な髪が傷んじゃうよ?まあ、通りすがりの俺に何を言われてもあれだろうけど……」
「……いいんです。もうどうでも」
「……そっか。わかった」
そう言ってから俺は1度離れてから、近くのコンビニでタオルとホットのお茶。それと肉まんを買ってからもう一度不思議ちゃんのもとに戻った。はぁ……とんだ出費だよ。そう思いながら俺は彼女の頭にタオルをかけてゆっくりと拭く。
「え……」
「ほら、動かないの。どうでもいいんでしょ?」
驚く不思議ちゃんに温かいお茶を押し付けて少しでも水気を払うために拭く。タオルがずぶ濡れになった頃に俺は残ってる肉まんを半分に割ってから彼女の目線にあわせて座って片方を渡した。
「ほら、温かいうちに食べなよ」
「……どうして」
「ん?肉まん苦手?」
「どうして見ず知らずの私に良くするんですか?」
んー、不審に思われてるのか。まあ、下心があると思われても不思議じゃないけど……
「同じ学校の後輩を放置するのは目覚めが悪いからね」
「真面目に答えてください」
と、言われてもなぁ……
「怒らない?」
「怒りません」
「んー、子猫とか子犬が捨てられてたら助けたいでしょ?」
「………なんですかそれ」
くすりと笑う彼女。なんだ、笑顔も可愛いじゃん。そう思いながら肉まんを食べると彼女はポツリと言った。
「……お父さんが再婚相手を連れてきたんです」
ということは母親は亡くなったのかな?まあ、デリケートな問題だしな。深くは触らないでおこう。
「わかってるんです。お父さんも自分の幸せが欲しいってことは。でも、お母さんのこと忘れたみたいで納得できなくて、それで喧嘩しちゃって……」
「なるほどね」
親子喧嘩か。まあ、そういうのも時には必要だしね。特に子供にとって親の再婚はそう簡単なものじゃない。まあ、家の母親はもう少しそういう気配を見せても良さそうだとは個人的に思うが……本人が父さん以外を愛せないと仕事に精を出して帰ってこないので仕方ない。
「私、お父さんに酷いこと言っちゃったし……お父さんもお母さんのことなんてどうでもいいって言ってたし、もう私どうしたら……」
ポロポロと涙を零す彼女。なんか昔も妹をあやす時にやったなぁと思いながら涙を指で掬いとると、俺は言った。
「お父さんのこともお母さんのことも大好きなんだね」
「……当たり前です。大切な家族ですから……」
「うん、ならさもう少し信じてもいいんじゃないかな?」
「……信じる?」
「うん、お父さんのことをさ。今すぐ向き合えとは言わないよ。でも、時間をかけて理解する努力をすることは無駄じゃないと思うよ」
眼帯から零れてる涙を掬うために眼帯をズラす。と、綺麗なオレンジ色の瞳がそこにはあった。
「あ……あ、あの、これはその……」
「綺麗な瞳だね」
「え……」
「ん?オッドアイなんて珍しいことじゃないでしょ?銀髪にもあってて可愛いと思うよ」
ポンポンと頭を撫でると、何故か顔を真っ赤にする彼女。俺的には妹を昔あやしたような感覚でいたが……後々から考えるとセクハラと言われても否定出来ないよなと思うのだった。
「あ、あの……お名前は?」
「俺?俺は霧雨嵐だよ」
「霧雨先輩……わ、私は水蓮寺紗耶です」
それが俺たちの出会いだった。まさか彼女がこの後依存系のヤンデレにビフォーアフターするとはこの時の俺は知る由もなかったのだった。