パグ・チャド・ローの休眠
息抜き。
薄明りの街灯が照らす夜の道。塾帰りのパグは、自転車のハンドルを人差し指でリズミカルに叩きながら、口笛を吹いていた。肩にスクールバッグをかけている。
パグは自転車をこぎ進めていくと、四方にマンションが立ち並ぶ十字路に出た。いつも通りパグは右折し、自動車通りの多い道の端を通っていく。そして『あれ』が見えた所で、パグはほのかに眉を顰めた。
『あれ』とは、架道橋の下に設けられたトンネル、俗に言うガードの事である。線路の下を掻い潜るように車道が続いており、その脇には少し高い位置に隔てられた下り上りの歩道があった。
どうしても夜中治安の悪くなるこの街で、そのトンネルの壁一面には、薄気味悪いスプレーの文字が連なっているのだ。パグはそれが嫌いだった。
地面が下り始めたところで、パグは直ぐに目をぎゅっと瞑る。視覚さえ封じてしまえば、どうってことないただの道だ。パグは風を切るのを肌で感じながら、勢い良く下っていく。
あっ。不意にバッグが手すりに当たって、バランスを崩すパグ。驚いて目を開くと、目線の先にはカーブミラーがあった。
カーブミラーは非常通路を映す為の備え付けなのだが、通路の奥に男がいたのを視認する。
これはいけない、とブレーキを強く握ったが、中々スピードは緩まない。タイヤが擦り切れるような音をたてながら、着々と通路に近づいていく。
そこでパグは気付いてしまった。カーブミラーと男の手の間には、透明な糸がぴんと張っているのを。
パグの首が糸に差し掛かる。首には糸が切れ込んでいって―――
スパ。グチャ。ドロ。
「おやすみなさい」
男は呟くと、不気味に目尻を吊り下げた。
ネタ小説です。
スパグチャドロおやすみなさい→ス(パグ)(チャド)(ロお)(やすみなさい)